2012年03月01日

創造力を研ぎ澄ませ〜ノマドの挑戦〜

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 以前ノマドと複業化というエントリで、時代が分業から複業に移っているという視点でノマドを考えました。今回は創造力という視点から考えてみようと思います。

 ヒトの脳みそがある時何を考えるかは自発的で直接コントロールできません。街を歩いていて頭の薄い人を見かけた時、(あ、ハゲだ!)と心の中で思ってしまうのを止める事はできません。しかし、そこで「あの人、ハゲ!」と口に出していってしまうのはせいぜい子供で、ほとんどの場合空気を読んで黙っています。

 しかし、時間をかければ何を考えるかある程度コントロールできます。(あ、ハゲだ!)と思った後に(俺も明日は我が身。そんな風に考えるもんじゃない)と内省することはできます。そんな内省を繰り返していたら、いずれ頭の薄い人を見かけたら(あ、頭の薄い人だ)という言葉で感じるようになるかもしれません。

 創造性についてはどうでしょう。あるプロジェクトに真剣に取り組んでいれば何か新しい着想を得るかもしれません。しかし、例えばプロジェクトの終盤で周りが混乱すると思えば口に出すことなく手元に記録して次期プロジェクトで生かそうとするかもしれません。そこまではまだ許容できますが、場合によっては(こんな状況でこんなこと思いつくもんじゃない)と着想したこと自分を責めるかもしれません。しかも無意識に。

 これは創造力の危機です。せっかく異分野交流会やFacebookの新たなつながりによって刺激を受け自分の感性を研ぎ澄ましても、会社に戻れば自分でせっせと丸め直しているかもしれません。周りにも「独創的なアイデアを」と言われているのに、実際には全力で普通のアイデアを考えるよう、し向けてしまうのです。そこで独立やノマドワーキングが意識されます。

 デザイナーやアーティストにとっては独立は昔から良くあるスタイルです。クライアントごとに相手の要望に応じた創造をしつつも、独立していることで自分の創造性の軸は守ります。あるクライアントのプロジェクト中に、関連はしているんだけど口には出さない方が良い発想が頭に訪れれば、(お、俺すげえこと思いついた。今は言わない方がいいけど)とそっと自分のアイデアストックに記録します。思いついたことを責めることなどありません。そして後で他のプロジェクトに応用したり自分自身のプロジェクトに活用したりできる日まで暖めます。自分の創造性を研ぎ澄ますために独立のスタイルを選択するのです。

 いまや高い創造力を求められるのは、デザイナーやアーティストだけではありません。幅広い業種で求められています。もし今会社で素晴らしいチームに恵まれ、自分の創造性が守られ、あるいはむしろ高められているのだとしたら、それはむしろ多少の不都合(長い通勤時間など)があってもそこで働くモチベーションになるでしょう。しかし、もしそうでないのだとしたら、自分の中に育ち始めた「金の卵を産むニワトリ」がのびのびと生きられる環境を真剣に考えていることでしょう。そのひとつの答がノマドスタイルです。

 「金の卵を産むニワトリ」を育む方法はノマドスタイルだけではありませんが、今後ますますノマドな人が増えることは、イノベーションの源泉にもなります。研ぎ澄まされた創造力を携えたノマドが様々なチームに入り、あるいはノマド同士が出会い、様々なイノベーションが起こることでしょう。楽しみです。
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2011年12月19日

静かに進む変革

起きない排斥運動


 初音ミクは登場して4年で世界のグーグルが紹介するまでに広がりました。そこまで広がっているのにこれといっていざこざが起きていません。たとえば過去ビートルズが日本に来た時には多くの学校でライブに行ってはいけないと指導があったと聞いています。新しいものに拒絶反応を起こす大人は当然います。初音ミクでもそういう大人たちが固まって反対しだしても良さそうですが、それほどでもありません。

 こういった状況は初音ミクに限りません。例えば先日ニコニコ学会βを紹介しましたが、仮に何十年か前だったら、本物の学者は出られなかったかもしれません。出たら本当の学会出入り禁止にするぞと脅されて。

 最近自分で本をスキャンする俗にいう「自炊」(「自分で吸い上げる」から)が静かに流行っています。自炊して文字認識すると書籍の本文を検索できるようになるので、引用作業などが劇的に効率的になります。著作活動されるような方にとって大きな福音です。本のスキャン代行に横やりが入ったり、電子書籍はなかなか広まらなかったりする傍ら、自炊は誰にも邪魔されることなく広がっています。仮に昔であれば、「お前自炊してるのか。そんな奴に本は売れない」とどこの本屋も本を売ってくれなくなっていたかもしれません。
 

排斥運動が起きない原因


 これは偶然ではありません。まず情報処理技術が生んだソーシャルネットワークが効いています。大きな声を出さなくてもソーシャルネットワークを通して仲間が増えていきます。初音ミクもニコニコ学会βも自炊ノウハウも、それを初期から支持する人はどこかにいます。昔はそういう人とつながるのが大変でした。ニコニコ学会を立ち上げるための同志を学者に探そうとすれば、大声を出さなければならなかったかもしれません。同志はどの学会の誰なのかわからないのです。それは当然そのような試みを忌み嫌う学者の耳にも届き反発を誘発するでしょう。でも今は反対しそうな人がまったく知らないところで、情報を伝えたいもの同士で伝わって行きます。

 また自由が社会に根付いてきたこともあるでしょう。例えば本の自炊をするしないは個人の自由です。が、昔であればそれに対するあからさまな干渉があったかもしれませんし、社会もそういう干渉を黙認した可能性もあります。

 社会が多様化したこともあります。ニコニコ学会βはある人たちにとってはとても象徴的なイベントだったと思いますが、学問の分野でも新しい試みは腐る程されています。おそらくほとんどの学者にとってニコニコ学会βは「ふーん」で終わり、将来それが学会という概念を変えてしまうほどの脅威になるとは思わないでしょう(実際ならないかもしれませんが(苦笑))。

排斥運動が起きないからくり


 以前も使ったロジャーズの採用者分布曲線を使えばこういうことです。

ロジャーズの採用者分布曲線(@IT 情報マネジメント用語事典から)

 つまりある新しい試みが始まろうとしたとき、その良さにいち早く気付く「イノベーター」や「アーリーアダプター」に効率よく伝わるようになりました。全国(場合によっては全世界)に薄く広がっていたとしてもソーシャルネットワークが伝えるのです。もしこの段階で「アンシャン・レジーム(旧体制)」に反対されればつぶされてしまうかもしれませんが、共感する者同士でつながるソーシャルネットワークでは共感しない者にはなかなか伝わりません。たとえ伝わったとしても将来いかに脅威になるかピンと来ず、なんか若い奴がふざけてやってるねくらいで流されもします。「アーリーマジョリティ」に広がるようになってから、ついに「アンシャン・レジーム」が気付いていろんな手を打つのですが、もはや叩きつぶせる規模ではなく、状況を受け入れて行くしかありません。

 世の中、変えなければいけないのに、抵抗されて変わらないものはいくらでもありますが、一方で多くの改革が「アンシャン・レジーム」と全面対決することなくひたひたと進んでいます。倒幕運動がなくても社会が明治維新のように大きく変わって行くかもしれません。情報処理技術が生んだソーシャルネットワークが人類にもたらすもっとも大きな恩恵ではないでしょうか。

・併せてどうぞ
「みんな仲良し」からの解放〜共生】 いざこざが起きにくいのは、新しい試みが既存の仕組みに食って掛からず、勝手にやってますからというところにもあるでしょう。
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2011年12月15日

タグで分かる「未来の普通」な話題の関連

 毎日様々なニュース・話題を耳にします。その中には「お、これって新しいな。『未来の普通』になるかも」と感じることはありませんか? たとえばIT技術とも呼ばれる情報処理技術の発展は凄まじいですから、次々「未来の普通」っぽいものが出てきます。2007年にiPhoneが出て来たときはそんな感じでしたし、実際「普通」になりました。

 しかし、そうした「お。」と感じるような話題はあらゆる分野で見つけることができ、その中には情報処理技術の発展では説明できないものもあります。あまりにあちこちであらゆることが変化しているので、秩序のないカオスな状況にも見えます。

 そこでこのブログではみつけた「未来の普通」を紹介する時に、「情報への挑戦」など10種類程度のタグを使って、各記事に付けています。全く異なる分野の話題であっても、似た背景を持つもの同士がタグで関連付けられています。

 タグは次のようにして作られました。様々な変化を沢山集めてみると、異なる分野の変化であっても似た傾向が見られるものがあります。そこで似た傾向のものを集めては、さらにそれらの傾向同士で似たところを探してまとめることで、大きな流れを取り出しました。それは次の三つの挑戦です。

情報への挑戦
成熟への挑戦
多様性への挑戦

 一つ目は「情報への挑戦」です。情報革命とも呼ばれ誰もが身近に目の当たりにしている変化です。日増しに人類はより大量の情報を扱えるようになっており、その結果かつてできなかったことが次々実現しています。

 二番目は「成熟への挑戦」です。あまり知られていないことなのですが地球の人口の増加率は減少しています。毎年人口は増えているけれど増え方は減速しているのです。それも40年程前から一貫していて、2070年頃には増えなくなりそうです。世界的に見てもやがて人口は安定するのです。日本を始めすでに人口が増えなくなった国もあり、社会や経済をどう持続的に回して行くのかという問題に直面しています。成長を前提とした仕組みでしたから、うまく動かなくなっています。しかし、ヒトが誕生する前からずっと持続的に繁栄している自然の豊かさをみれば、人口が安定することは真の繁栄の始まりでこそあれジリ貧なわけがありません。ただ安定を前提とした仕組みが分かっていないだけなのです。それに向けて様々な取り組みが始まっているのです。

 三番目は「多様性への挑戦」です。これはある意味「成熟への挑戦」によって生まれる具体的な成果であり、また武器です。自然がそうであるように安定した世界は多様性のるつぼになります。世界が安定することで様々な種が活動できるようになります。人間社会も成熟に向かい始め、多様性を受け入れられるようになりました。その途端に多様性は一気に高まっています。それは問題解決のための武器になるからです。今社会にある様々な問題を解決するために必要なイノベーションは、一人一人が多様な考えや能力を持ち協力することで起こりやすくなるからです。

 無秩序に発生しているように見える様々な変化も丁寧に見て行くとこの三つの挑戦が背景に見えてきます。

 次にそれぞれの挑戦の中で特に特徴的な現象を二つずつ取り出しました。

 「情報への挑戦」では、なんといっても「情報処理技術の発展」がその原動力です。また「情報処理技術の発展」によってありとあらゆる知的な活動や生産が誰にでもできるようになりました。たとえばメディアと言えば昔は新聞・テレビなどのマスメディアでしたが、今では個人のブログも欠かせない情報源です。そういった個人への「知的生産の解放」がありとあらゆる分野で起こっています。

 「成熟への挑戦」では、まず目につくのは資源に注目した「循環型社会」に向けた取り組みです。資源が限られる中どう持続的に回して行くのか、持続型社会と言えば、このことだと思います。その一方で「持続型人間社会」に向けた取り組みも始まっています。つまり人口が増えない前提でどう社会を回すのかという問題です。経済の問題も含まれます。今後GDPは増えるとしても穏やかである中で、どう経済活動を繁栄させるのか新しい切り口が生まれていくことでしょう。

 「多様性への挑戦」では、「共生」が大きなテーマです。「共生」とは相手との違いを丸ごと受け入れて共に生きることです。クマノミとイソギンチャクのような自然の共生をイメージしてもいいかもしれません。互いにまるで違いますし、その違いは丸呑みするしかないし、でも相互関係をもって共に生活しています。多様性が進むということは、人間社会において互いにまるでクマノミとイソギンチャクくらい違うねと認識しつつ、それでも協力するようになるということです。そのことで互いに思いもしなかったような成果が生まれ易くなります。つまり多様性が進むことは強力な「イノベーションの源泉」になります。

 またこのような状況を背景に様々な挑戦は個人や地域から起こることが目立っています。それらを「個人からの挑戦」「地域からの挑戦」というタグで紹介しています。

 以上がこのブログで使われているタグの概略です。個別のタグの詳しい説明は記事を改めて紹介します。このブログで見つけた未来の普通にはこれらのタグがついていますから、何が付いているか見ながら読むとより楽しめます。またこれらのタグを頭の隅においてニュースなどを見ると無秩序に見えてた変化が整理できて楽しくなります。
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2011年11月19日

アイデアストリーミングで発想が次々湧いてくる

 今日予告通り楽天テクノロジー・カンファレンスのランチ・セッション the LT (ライトニング・トーク)「アイデアストリーミングで発想が次々湧いてくる」という発表をしました(34:55辺りから)。聞いてくださった方ありがとうございました。とても楽しかったです。

発表内容を紹介しておきます。

 皆さんアイデア出すためにブレスト(ブレインストーミング)ってのよくやると思うのですが、一度に一人しか発言できないという大欠点があります。アイデアが出始めるとみんなの頭の中に一斉に出てくるので、取りこぼしてしまいます。そういた点を改良するために付箋に書き込む Brainwriting といった手法もありますが、紙に書くくらいならコンピュータでやっちゃえと開発したのが、この手法です。

 とりあえずソーシャルメディアがあればできます。 Facebook, yammer, youRoom, Trello などがいいでしょう。

やり方

 ・ノートパソコン持って集まる。効率は変わるが必ずしも同じ場所に集まる必要はない。Facebook などでアイデアストリーミングの場所を作る。リモートの人はそこだけだと会話が辛いかもしれないので Skype とか併用するといいかも。

 ・ブレインストーミングの要領でアイデア出しを始める。

 ・アイデアが出たらアイデア毎に投稿する。二つ以上のアイデアを一つの投稿にしない。
 
 ・アイデア出す合間に未読のアイデアを見つけたら読む。コメントがあればコメントをつける。良いアイデアには「いいね!」を付ける。乱発気味になる場合は、過去のアイデアの「いいね!」を外して良いこととし、より良いアイデアにのみ「いいね!」を付けることにする。youRoom は読んだアイデアを再び未読にできるのでコメント追いつかない時便利。

 ・あるアイデアを読んでいて新しいアイデアを思いついたら、コメントとしてではなく新しく投稿する。ここでできればどのアイデア達から派生したか管理したい。youRoom と Trello はアイデア毎に固有の URL があるのでそれを拾っておくと派生を記録できるが、手作業で行うのはたぶんかなりきつい。

 ・アイデアの代わりに「進行」「雑談」という記事を投稿しておいて、それにコメントをぶら下げていく形をとれば、声以外でコミュニーケーション可能か。

 ・必要ならファシリテータを決め、一般のブレインストーミングと同じように進行管理する。例えば wikipedia の「ブレインストーミング」に書かれている4原則などの徹底が重要。


判断・結論を出さない(結論厳禁)
自由なアイデア抽出を制限するような、判断・結論は慎む。判断・結論は、ブレインストーミングの次の段階にゆずる。ただし可能性を広く抽出するための質問や意見ならば、その場で自由にぶつけ合う。たとえば「予算が足りない」と否定するのはこの段階では正しくないが、「予算が足りないがどう対応するのか」と可能性を広げる発言は歓迎される。

粗野な考えを歓迎する(自由奔放)
誰もが思いつきそうなアイデアよりも、奇抜な考え方やユニークで斬新なアイデアを重視する。新規性のある発明はたいてい最初は笑いものにされる事が多く、そういった提案こそを重視すること。

量を重視する(質より量)
様々な角度から、多くのアイデアを出す。一般的な考え方・アイデアはもちろん、一般的でなく新規性のある考え方・アイデアまであらゆる提案を歓迎する。

アイディアを結合し発展させる(結合改善)
別々のアイデアをくっつけたり一部を変化させたりすることで、新たなアイデアを生み出していく。他人の意見に便乗することが推奨される。


 次の表は各ソーシャルメディアでの機能対応表です。
functionmap.png


 以上が基本なので是非使ってみてください。これを使っても湧き出るアイデアをすべて抽出するのが難しいくらいになること請け合いです。感想大歓迎です。
 
 ツールはどれを使ってもそこそこ使えますが、どれももう少し使いやすくしたいところが出てきます。また派生の管理は是非やってみたいところです。今後はカスタマイズが課題です・・。
 
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